皮革のにおい
- 読み方
- ひかくのにおい
- 英語
- Smell of leather
- 意味
- 人間に快感として感じさせるものを、香り(odor)と表現し、匂い(smell)と呼んでいる。不快なものを、臭気(malodor、 offensive odorなど)と表現し、臭い(smell)<におい>と呼んでいる。嗅覚には個人差があり、この項目では“におい”と呼ぶことにする。
皮革製品のにおいにおいて、動物の生体から発するにおい成分は皮革製造工程においてほとんど取り除かれているため、皮革製造に使用される鞣剤、仕上げ剤や加脂剤など製造工程で使用される薬品が主要な成分である。クロム鞣しが普及するまでは、軍隊用の皮革製品に代表される植物タンニン鞣し革の植物タンニンと加脂剤から発生する成分が主なものであった。戦後、クロム鞣しが普及するとクロム鞣剤は揮発性物質が少ないため、皮革の主要なにおい成分にはならないが、仕上げ剤と仕上げ塗装に溶剤として使用されるシンナー成分や加脂剤の成分などが主要なにおい成分となった。靴などの皮革製品において溶剤型接着剤が使用された場合、有機溶剤が加わる。有機溶剤は時間経過とともに蒸発してにおいは弱くなり、加脂剤の酸化生成物(例えばアルデヒド化合物など)は増加するが、酸化される油脂が無くなれば酸化生成物は減少する。したがって皮革製品を通気性の良好な場所で保管し、時間がたてば皮革のにおいは弱くなる。
臭い物質の分析法としてガスクロマログラフ質量分析計(GC-MS)を使用する方法がある。この方法で皮革中の揮発成分を分析すると、次のような物質が検出されている。製造工程で使用された有機酸、加脂剤の酸化生成物である、ヘキサナール、ヘプタナール、ノナナールなどのアルデヒド化合物、魚油を加脂剤として使用した場合に検出されるジメチルアミンやトリメチルアミン、シンナーなどの溶剤成分であるエトキシエタノール、トルエン、植物タンニン鞣し革ではフェノールや種々のフェノール化合物も検出される。デカン、ウンデカン、ドデカンのほか様々な炭化水素化合物は加脂剤の成分であるが、皮革のにおい成分として主要な構成成分である。