古くからある鞣し法の一つ。脳しょう(漿)鞣し法で作られたシカの白皮<しらかわ>のくん煙は、松葉あるいは稲わらをいぶした煙をあて、鞣し効果により白皮の保存性や水に対する安定性を高め、外観にくん煙色の着色するために行う。
通常、甲州印伝の製品加工の前に行われ、煙材料により色調が異なる。この設備の基本は、煙を出すためのかまど、白皮を張り付けるいぶし太鼓(いぶし胴)からなる。なお、地域によってこのくん煙のことを、ふすべ、えぶし、いぶし、くすべといういい方がある。
くん煙中には、鞣し効果をもったアルデヒド類、カテコール化合物やフェノール化合物のようなポリフェノール化合物がガス状や粒子状で存在する。これらが皮タンパク質と結合することによって着色し、鞣されることが考えられる。
上右:1)高温に加熱したコテで表面を焼く(革すり)。
下右:2)革すりした革を太鼓に糸などを使用して貼る。
上左:3)太鼓に貼った鹿革をわらや松脂でいぶす。
下左:4)いぶし終わった革を太鼓から取り外す。
≪くん(燻)煙鞣し≫
≪原始的なくん煙鞣しの例)≫