耐熱性
- 読み方
- たいねつせい
- 英語
- Heat resistance
- 意味
- 一般には材料を加熱したときの性状、寸法、物性、外観などあらゆる理化学的性状の変化のしにくさをいう。革では、革タンパク質本来の分子構造が加熱するとある特有な温度(液中熱収縮温度、Ts)で崩壊してゼラチン化したり、繊維が収縮や変形したりするので、この意味の熱安定性をさすことが多い。図のように、皮革の耐熱性は水分によって大きく異なり、水分量が増えると低下する傾向がある。
クロム鞣しにより湿潤状態での耐熱性は顕著に上昇するので、革の耐熱性(特に湿潤耐熱性)は鞣しの度合いの尺度として重要視されている。例えば、表に示す動物の生皮の熱収縮温度は53~67℃程度であるが、クロム革は100℃以上になることが多い。また、鞣し剤の種類によって熱収縮温度は大きく異なり、クロム鞣し革が最も高い。
一方、乾燥状態では鞣しの種類に関係なく熱収縮温度は高く、標準状態(相対湿度65%、温度20℃)で皮革製品の水分量は約14~15%であり、このような状態の耐熱性は靴の製造時、甲部の釣り込み成型などで重要な性質である。乾燥時の耐熱性を評価するために耐乾熱性試験がある。
湿潤状態での耐熱性は、液中熱収縮温度としてJIS K 6550:1994で規定されている。同様の試験はISOでもISO 3380:2002で100℃までの測定が規定されている。また、乾燥時の耐熱性を評価するためにJIS K 6543:1995がある。ISOでも耐乾熱性の規格として、ISO 17227:2002があるが、JIS K 6543:1995とは異なる方法である。150、200、250℃で試験することになっている。パテントレザーに関しては、ISO 17232:2006の規格もある。
≪皮革の変性温度と水分量との関係≫
≪生皮や革の耐熱性≫
皮革の種類 | 耐熱性(液中熱収縮温度)℃ |
生皮 | カーフ | 63~65 |
成 牛 | 65~67 |
ヒツジ | 53~62 |
魚(寒帯に生息) | 33~52 |
魚(暖帯に生息) | 49~58 |
鞣した牛革 | クロム | 77~120 |
ジルコニウム | 75~97 |
植物タンニン | 70~89 |
アルミニウム | 75~85 |
グルタルアルデヒド | 65~80 |
ホルムアルデヒド | 63~73 |
魚油(油鞣し) | 50~65 |