鞣剤<じゅうざい>ともいう。鞣し剤は皮などのコラーゲン線維に対し鞣皮性をもつ薬剤で、皮のコラーゲン線維間又は線維内で化学的に架橋し、また線維間を充填することによって、コラーゲン線維が安定し固定される。その結果、熱収縮温度(耐熱性)を上昇させて熱によりゼラチン化せず、耐薬品性を向上させ、防腐性を高め、乾燥による硬化や変形の少ない革に変えることができる。
鞣剤の種類は、無機系でクロム塩(3価の塩基性硫酸クロム塩)、アルミニウム塩(明ばん、高塩基性塩化アルミニウム)、ジルコニウム塩(塩基性の硫酸又は塩化ジルコニウム)、チタン塩(塩基性硫酸チタン)があり、有機系で植物タンニン(ワットル、ケブラチョ(ケブラコ)、チェス(ト)ナットなど)、合成タンニン(芳香族系、脂肪族系、樹脂系)、アルデヒド(グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、グリオキザール)、不飽和油脂(魚油、主にタラ肝油)がある。鞣し方法はそれぞれの鞣し剤でコラーゲンとの結合挙動が異なるため、表のように耐熱性、風合い、機械的性質も大きく異なる。
代表的な鞣剤が革に付与する効果
鞣剤の種類 | Ts(℃) | 耐熱性 | 染色性 | 弾力性 | 可塑性 | 充填効果 | 吸水性 | 色調 |
クロム | 77~120 | ◎ | ◎ | ◎ | × | △ | ○ | 淡緑味 |
植物タンニン | 70~89 | ○ | △ | × | ◎ | ◎ | △ | 黄~赤茶 |
合成鞣剤 | 63~88 | △ | ×~△ | △~○ | ○ | △~○ | ○ | 黄味茶 |
アルデヒド | 63~85 | △~○ | ○ | △ | × | ×~△ | ◎ | 白~黄 |
ジルコニウム | 75~97 | ○ | ◎ | △ | ○ | △ | △ | 白 |
油(魚油) | 50~65 | × | ○ | △ | × | × | ◎ | 黄 |
◎:非常に優れている、○:優れている、△:普通、×:劣る、
Ts:液中熱収縮温度