皮革用語詳細

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用語
鞣し --なめし--
Tanning, Tannage
意味
人類が地球上に生存し始めたときから、動物皮を防寒用、居住用テント、そのほかの生活用品として利用していたことは明らかである。エジプト・テーベンの遺跡で発見された紀元前の壁画は製革技術がかなり普及していたことを物語っている。また、動物皮の線維をか(噛)んで柔軟にしている絵もよく紹介されている。さらに、わらや雑木などの煙で皮をいぶ(燻)したりして腐敗しないようにして皮の鞣しが始まった。日本でも古来より伝わる鞣し方法に、菜種油を用いて鞣す“白鞣し革”や動物の脳しょう鞣し革、くん(燻)煙鞣し革などがある。
鞣しとは動物皮のコラーゲン線維を精錬純化して、この線維を鞣剤<じゅうざい>によって処理し定着固定し繊維にする。必要に応じて、染色加脂を施し、柔軟にする作業を総称している。さらに耐久性やファッション性を付加するため、革の表面に塗装仕上げなどを行う。これらの工程を施すものを製革工程といっている。
鞣しの方法として、古くは剥皮した動物皮を乾燥し、たたいたり、擦ったり、もんだりして線維を解して、いわゆる物理的処理によって行われた。その後、煙でいぶしたり、動植物の油を塗ったり、植物の浸出液に漬け込んだりして柔らかくして線維を柔軟にしていた。近年は、一般的にクロム鞣しが最も多く普及しており、植物タンニン鞣しアルデヒド鞣し、そのほかの鞣し方法があるが、最も多く使用されているのはクロム鞣しと植物タンニン鞣しである。
現在、鞣しの定義として動物皮の線維構造を保持し化学的、物理的操作により、種々の鞣剤を用いてコラーゲン線維を不可逆的に安定化させることである。その主な要件として、次の 3つの要素が挙げられている。
1) 耐熱性を付与すること。コラーゲン線維を化学的に架橋することにより安定化させると耐熱性が向上する。鞣剤の違いによって耐熱性が異なるが、これは鞣剤による化学結合の違いを反映している。
2) 化学薬品や微生物に対する抵抗性を付与すること。
3)皮に必要な物性と理化学的特性を付与し、いわゆる「革らしさ」を与えることである。すなわち、柔軟性、特有の感触(ヌメリ感など)、美しい銀面多孔性保温性吸湿性、放湿性)、耐水性耐熱性、適度な可塑性や弾性や耐久性などの優れた性質をもった革になる。漢字の「鞣」は「革」と「柔」とからなっており、皮を柔らかくするということが、“鞣し”の定義となることがうなずける。
鞣剤の種類は多く、クロム植物タンニンのほか、魚油などによる油鞣し、アルミニウム(明ばん鞣し)、ジルコニウム、アルデヒド類や植物タンニンを真似た合成タンニンなどがある。一般にはこれらの鞣しを併用したコンビネーション鞣し(複合鞣し)が行われているが、クロム鞣しを基本とした鞣しが最も多い。
≪動物皮を噛んで柔軟化≫
≪動物皮を噛んで柔軟化≫

≪中世のヨーロッパにおける皮革加工≫
≪中世のヨーロッパにおける皮革加工≫